
『英国王のスピーチ』(原題:The King`s Speech,2010)
あらすじ
英国王ジョージ5世の息子であるヨーク公のアルバート王子(バーティ)は小さいころから吃音に悩んでいたが、立場上、多くの人々の前で話すことが多いため苦しんでいた。
医師たちから治療を受けるものの、症状は改善しない。夫の様子に心を痛めた妻のエリザベスは、言語療法士のライオネル・ローグを訪ね、夫のために力になってくれるよう頼む。
半信半疑のバーティだったが、妻のすすめでローグの診察室を訪れる。身分の違いも気にせず気さくに話しかけてくるライオネルに戸惑いを隠せないバーティ。さらにライオネルは、治療のためにはお互いの信頼関係が重要だと話し、お互いに対等な立場でいることを求める。
ライオネルのペースに圧倒され、指示されるままレコードの音楽が聞こえてくるヘッドフォンをし、シェークスピアのハムレットの一説を読むバーティ。しかし的を得ない質問ばかりをされ、腹を立てたバーティはライオネルの治療法は自分には合わないと途中で帰ってしまう。
ある日、国民のためのクリスマス放送を終えた父ジョージ5世から自分の前で同じようにスピーチをやってみろと言われたバーティだが、威圧するかのような父の態度にうまく喋れない。失意の中、ローグの診察室から帰る時に「おみやげ」だと渡された、自分の声を録音したレコードを聞いてみることにしたバーティ。
驚いたことにそこにはつまることなくすらすらと文を読み上げる自分の声が録音されていた。
バーティとエリザベスは再びローグのもとを訪れ、治療の協力を頼む。
この映画はヨーク公のバーティ(後の英国王ジョージ6世)が、型破りな言語療法士のライオネルとともに自身の吃音を克服しようと奮闘する物語です。立場上スピーチをする機会が多く、人前で話すプレッシャーに苦しんでいたバーティですが、ライオネルと出会い、吃音の治療に本格的に取り組んでいきます。
物語は王族としてのバーティと、一人の人間としてライオネルと治療に励むバーティのシーンが交互に挟まれ展開していき、その目線は一貫して静けさを保っています。
父や国民の期待に押しつぶされそうになっていたバーティですが、治療を続けていく中、自分を深く見つめ、妻やライオネルに支えられ少しずつ自信を取り戻していきます。
吃音の治療にあたるライオネルも、バーティに対し患者と治療者という関係だけでなく、一人の友人として誠実に接しており、その関係性は示唆に富んでいます。
派手なシーンはありませんが、バーティとライオネルが行う治療法も興味深く、また登場人物たちの葛藤や感情を丁寧に描いており、静かな感動を呼び起こす作品です。