第2回吃音臨床ワークショップ~DCMに基づく小児吃音へのアプローチの実際~

去る2026年5月9日、京都光華大学看護福祉リハビリテーション学部福祉リハビリテーション学科言語聴覚専攻と共催の第2回吃音臨床ワークショップが開催されました。
今回は埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンター学院言語聴覚学科教官の坂田善政先生を講師としてお招きし、「DCMに基づく小児吃音へのアプローチの実際」をテーマにご講義いただきました。
参加者は50名。既にST(言語聴覚士)として活動されている方や通級指導教室の教員、医師、心理士、児童ケースワーカーの方など、臨床経験のある方、ない方、多くの方に参加して頂きました。また、熊本県や千葉県から参加されている方もいらっしゃいました。
ワークショップではグループワークも行われるため、最初は座った席の前後左右、斜めの方たちと自己紹介をし合い、和やかな雰囲気の中スタートしました。
ワークショップは①DCMとは②RESTART-DCM③JSTART-DCM④事前質問について⑤質疑応答の流れで進行しました。
DCM:要求―能力モデル(Demands and Capacities Model:DCM)
吃音は要求(負荷)が能力を超え、バランスが崩れた時に生じるという考えのもとに吃音の発症と吃音症状の変動を説明する仮説。
DCMに基づくアプローチ
DCM的な考え方に基づき、子どもへの内的(例:完璧主義、せっかちなど)・外的要求(demands)を下げ、子どもの能力(capacities)(例:情緒面、言語表現力、発音トレーニングなど)を上げることを実践するアプローチ。
DCMに基づくアプローチを実際に臨床で行う際、吃音症状は変動するということ、その変動は多様な要因が関係しており、その要因の状況を変えることが役立つことがあるということを保護者に伝えると、分かりやすいのではとのお話でした。
また、保護者に説明する際には、保護者が責められていると感じないようにする配慮が必要であり、「今の子育てが悪いということではない、きわめて普通である。ただ、どもりやすい子には特別な環境が必要である」ということを伝えることが大切とのことでした。
この後、坂田先生が保護者との面談のやりとりを実演してくださり、その後、臨床家役、保護者役に分かれて模擬面談を行いました。
JSTART-DCMの項目では、JSTART-DCMの直接的発話指導で用いられる流暢性形成法(吃音症状が生じにくい、流暢性が増しやすい発話パターンを形成していく訓練法)を、実際の診療場面の動画を用いて説明していただき、グループで演習を行いました。
質問の項目では、吃音を積極的に治療していくのか、間接的に支援していくのか見極めが難しい、講師の先生の考えが聞きたいという意見がありました。
以下坂田先生の回答を抜粋して掲載させていただきます。
どもることは悪いことではない、どもるあなたは悪くないということは多くの人が共有できる認識である。しかし、治したいと思ってもいい。決めるのは本人と保護者。
「どもってもいい」と思えない子どもや保護者には「どもってもいいんだよ」という考えを押し付けることはしない。そのような考えに至った背景を理解した上で、「どもってもいいんだ」と保護者と子どもが思えるような支援をしていく。なぜなら、「どもったらダメだ」と思っている限り、吃音のある子やその保護者は救われないから。
吃音を治すという表現は使わない。「治す=悪いものを取り除く」というイメージは確かにあるし、子どもの吃音は大人になっても続く可能性がある。「治そうね」と言われたものを抱えて生きていくのはつらいのではないか。
吃音に困っている人がいれば、「流暢に話す能力の発達を支援する」、「どうすれば吃音による悩みを軽減できるか一緒に考えていく」という立場で、子どもや大人、そのご家族に可能な支援を行っていく。できることはたくさんある。
ワークショップは朝から夕方までと長時間でしたが、坂田先生の図式や、多くの資料を用いた分かりやすい説明や時折挟まれるユーモアのおかげで、終始あたたかく和やかな雰囲気でした。
参加者の方々も熱心に聴講、グループワークを行っておられ、改めて吃音臨床に関わる方々の熱意に感銘を受けた一日でした。